【第25話】舵を取らずに進む船
靄の中を進み、
鬱陶しい何かにいつも縛り付けられているよう。
そんな風に感じる瞬間は人生で一度や二度ではない。
その度に必死で抵抗してもがいて、自分でコントロールしようとして、叫ぶ。
その掴んだものが藁だったのか、宝石の原石だったのかは知る由もないけど、
とにかくそれをすることが意味があるような気がした。
そして「正解だった」ということができる言い訳は曲がりなりにも存在した。
でもいまふと気付く。
私がもがいたことは何の意味があったのだろう?
激しい疲労の後に、変えられないものばかりが残り、途方にくれる。
涙は枯れ、もう戦う気力がなくなったときに気付く。
船は漕がずとも進んでいることに。
それは自分のエネルギーから出るものかもしれない。
自分の意志を故意にはっきりと放出しなくとも、
自分の日々の考えや環境や人脈で、知らずのうちに波を選別して乗って、前に進むのだ。
ゆらゆらともどかしくも思えるほどに、いったりきたりを繰り返しながら。
人生をどん底から這い上がらせる時期、手当たり次第にボートを漕いで、舵を取ろうとした。
それなりに困難を抜け出すことができ、今ではあのとき考えられないほど平和な生活を送っている。
そんな人生をもすらまた、より輝くほうに持っていきたいと、相変わらず貪欲な私。
あのときよりもペースは落ちるかもしれないけど、今度は慎重に、必要以上に船をコントロールしようとせず、気楽に目的地を目指していきたい。